相続関係説明図とは?必要性や作成方法も解説

遺産の相続手続きにはさまざまな工程がありますが、その中の一つに、相続関係説明図の作成という工程もあります。

相続関係説明図は、相続手続きの際に非常に役立ちますが、相続人の関係は複雑であり、説明図の作成は簡単ではありません。そのため、どのように作成すればいいかわからないと頭を悩まされる方も多いでしょう。

そこで今回は、相続関係説明図の概要や役割、相続関係説明図が必要となる場面、相続関係説明図の作成方法などについて解説します。

 

相続関係説明図に関する基礎知識

まずは、相続関係説明図の役割や、法定相続情報一覧図との違いなどについて簡単に説明します。

 

1.相続人関係説明図とは

相続関係説明図とは、被相続人と相続人との関係を示した家系図のようなものです。被相続人を中心とした相続人の関係が一覧になっており、親子関係や兄弟関係などを線で繋いで記載します。

遺産相続を行うには、誰が相続人であるのか明確にしなければなりません。また、財産を分割するにあたって、相続人の人数や、被相続人との関係性なども知る必要があります。

そのため、相続手続きでは相続人調査が行われます。その調査結果をまとめた書類が相続説明関係図です。

 

2.相続人関係説明図の役割

相続説明関係図を作成することにより、相続手続きに必要な相続人の関係をわかりやすく整理することができます。一目で相続人の関係性を理解することができるため、不動産や銀行などの相続手続きをスムーズに行うことができます。

 

3.法定相続情報一覧図との違い

相続人関係説明図と似た家系図のような書類として、法定相続情報一覧図というものがあります。被相続人と相続人の関係が記載されているという点では、相続人関係説明図と法定相続情報一覧図は共通しています。

しかし、相続人関係説明図と法定相続情報一覧図には、公的な書類かどうかという違いがあります。法定相続情報一覧図は法務省の法定相続情報証明制度によって公式に認められていますが、相続人関係説明図は公的な書類ではありません。

そのため、相続手続きで相続人関係説明図を用いた場合は金融機関などで戸籍謄本の提出が必要ですが、法定相続情報一覧図を用いた場合は原則として戸籍謄本の提出が不要です。

ただし、記載できる内容に違いがあり、相続関係説明図の方が記載内容の自由度が高いです。どちらが便利か判断をして必要な方を作成しましょう。

 

相続関係説明図が必要な場面

相続関係説明図は必ずしも必要というわけではありませんが、相続手続きを進めていく中で、相続関係説明図の提出が必要になる場面もあります。具体的にどのような場面で必要となるか説明します。

 

1.戸籍謄本の原本還付

不動産を相続した場合、被相続人から相続人への名義変更が必要となります。名義変更を行うための登記申請の際には、戸籍謄本や戸籍事項全部証明、改製原戸籍、除籍謄本などの提出が必要になります。

複数の不動産がある場合や、銀行での手続きもある場合には、手続きの度に戸籍謄本類を準備しなければならないため、手間と費用がかかります。

しかし、相続関係説明図を作成すれば、原本還付という制度を利用することが可能です。
作成した相続関係説明図と戸籍謄本を法務局へ提出して確認が済めば、戸籍謄本などの書類は全て返却してもらえます。そして、手続きごとに戸籍謄本類を準備する必要がなくなるため、スムーズに相続手続きを進めることができます。

 

2.預貯金の解約や払い戻し

銀行における相続手続きの際にも、相続関係説明図が必要になることがあります。
例えば、銀行口座の名義変更や解約、預貯金の払い戻しの際などです。

 

3.遺産分割調停の申立て

遺産相続にあたり、遺産分割協議にて話し合いを行います。しかし、協議では相続人間での合意が得られないようなケースも少なくありません。

この場合、家庭裁判所で遺産分割調停を申立て、解決に向けて調整を行います。

遺産分割調停を申し立てる際に、申立書に加えて相続関係説明図の提出も求められます。

 

相続関係説明図の作成方法

実際に相続関係説明図の作成を行う際、どのように作成すればいいのかわからないという方も多いでしょう。
相続関係説明図の作成するための流れや、記載すべき内容などを具体的に説明します。

 

1.必要書類を集める

相続関係説明図を作成する前に、まずは相続人調査を行います。

相続人調査とは、被相続人や相続人全員の戸籍謄本などを集めることです。
相続人調査では、以下の書類を集めます。

  • 被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍
  • 被相続人の最終住所を証明できる住民票、もしくは戸籍の附票
  • 相続人全員の戸籍抄本または戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票または戸籍の附票

これらの書類は、本人が窓口で直接取得するだけではなく、委任状があれば代理人が取得することもできますし、郵送で請求することも可能です。
また、個人で書類の収集を行うのが大変だという場合には、司法書士など専門家に依頼して収集してもらうことも可能です。

相続人調査で注意すべき点は、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要になるという点です。被相続人が引っ越しなどを繰り返している場合、移転先の役場でそれぞれ戸籍を取得しなければなりません。1枚の取得で済むことは少なく、複数枚の取得が必要になるケースが大半です。

 

2.情報を整理する

相続関係説明図を作成するために必要な書類を集めたら、説明図の作成前に情報の整理を行いましょう。多くの書類を取得する必要がありますが、書類の内容を全て相続関係説明図に記載するわけではありません。

相続関係説明図の作成に必要なのは、以下の情報です。

  • 被相続人の氏名、出生日、死亡日、死亡前の本籍と住所
  • 相続人の氏名・出生日・現在の住所
  • 被相続人と相続人の続柄の情報

相続関係説明図の作成前に、記載する内容をまとめておけばスムーズに作成へ取り掛かることができるでしょう。

 

3.相続関係説明図を作成する

相続関係説明図は、法律などで定められた書式があるわけではありません。また、手書きでもパソコンで作成してもかまいません。ただし、以下の項目は必ず記載する必要があります。

 

①題名

相続関係説明図の一番上の部分には、題名を記載します。
「○○〇(被相続人氏名) 相続関係説明図」など、被相続人の相続関係説明図であることが明確にわかる題名にしましょう。

 

②被相続人の基本情報

題名の下あたりに、被相続人の基本情報を記載します。
具体的には、被相続人の氏名、死亡日、最後の本籍地、最後の住所、登記簿上の住所などです。

 

③被相続人との続柄と人物名

被相続人を中心として、相続関係説明図に記載する人物と被相続人との続柄と氏名を記載していきます。
「夫」や「妻」、「姉」、「弟」などの続柄を記載します。配偶者は二重線で繋ぎ、それ以外の人物は、一本線で繋ぎます。

 

④相続人の情報

相続人の情報も相続関係説明図には必要です。
相続人の氏名だけではなく、出生日や現住所も記載します。

 

⑤相続の選択

相続人の名前の横に、相続の選択を記載します。
単独で不動産や土地を継承する場合は「単独相続」、それ以外は「遺産分割」と記載します。
また、相続放棄する人がいる場合は、「相続放棄」と記載します。

 

相続関係説明図を専門家に依頼するメリット

相続関係説明図は個人で作成することもできますが、法律の専門家に依頼することもできます。専門家に相続関係説明図の依頼をすると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

 

1.手間や負担を省くことができる

相続関係説明図を書くような機会は日常的にないため、個人で作成するには時間がかかってしまうでしょう。 作成方法を調べるだけではなく、相続人の調査も行わなければなりません。相続人の人数が増えるほど複雑になり、時間と手間がかかります。

相続関係説明図の作成をする準備を含めれば、作成する人の負担が大きくなることから、専門家に依頼する方が多いです。法律の専門家に依頼することにより、作成にかかる手間と時間を大幅に削減できます。

 

2.戸籍謄本の収集など手続きを全て任せることができる

相続手続きには、相続関係説明図の作成だけではなく、さまざまな手続きが必要です。 特に相続関係説明図の作成前に行う戸籍謄本などの書類の収集は、非常に手間と時間のかかる作業です。被相続人の連続した戸籍謄本を取得するだけでも時間を要しますが、相続人全員分の戸籍謄本や住民票なども集めなければなりません。
法律の専門家に依頼することにより、こうした面倒な手続きも全てまとめて任せることができます。

 

3.正確性の高い書類作成ができる

相続関係説明図は法律などで定められた書式がないので自由度が高いと言えますが、正確性が求められる書類です。
相続関係説明図に誤りがあれば、遺産分割協議を最初からやり直す必要が生じる場合もあります。また、後から、相続税に関するトラブルなどが生じる可能性もあります。
個人で作成した場合、書類集めの時点で漏れなどが生じる可能性があり、誤った情報をもとに相続関係説明図を作成してしまうことも少なくありません。

しかし、専門家に依頼すれば、専門的な知識と実務経験をもとに、正確かつ迅速に情報をまとめて相続関係説明図を作成することができます。

 

まとめ

今回は、相続関係説明図の概要や役割、相続関係説明図が必要となる場面、相続関係説明図の作成方法などについて解説しました。

相続関係説明図を作成すれば、被相続人との関係性や相続人の人数などを明確にすることができ、遺産分割に関する各種手続きをスムーズに進めやすくなります。また、相続手続きにおいて相続関係説明図が必要になる場面もあります。

手間や時間をかけずに正確な相続関係説明図を作成するためにも、法律の専門家に相談することをぜひ検討してみてください。