遺産分割協議書のサンプル

遺産分割協議書を作成する際、
「何をどのように書けばいいのかわからない」
「決まった書式はあるの?」
などという疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

遺産分割協議書には特に決まった形式はありません。
しかし、必要な事項が記載されていないと無効とされる場合もあるため、最低限必要な記載事項を把握しておく必要があります。

今回は、遺産分割協議書のサンプルをご紹介し、遺産分割協議書の記載項目や文例、遺産分割協議書を作成する際のポイントなどについて解説します。

 

遺産分割協議書のサンプル

まずは、遺産分割協議書のサンプルをご紹介します。
ただし、こちらで紹介するのはあくまでもサンプルです。必ずしも下記の形式にしなければならないというわけではありません。

また、遺産分割の内容によって、追加または削除すべき項目もあります。ご自身のケースに合わせて適宜内容を変更してご活用ください。

 

【サンプル】


遺産分割協議書

本   籍   大阪府○○市 ×町×丁目×番×号
最後の住所   大阪府○○市 ×町×丁目×番×号
被 相 続 人   大阪 太郎 ( 令和×年 ×月×日死亡 )

上記の者の相続人(相続人全員の氏名を記入)の全員は、被相続人の遺産について協議を行った結果、次の通り分割することに同意した。

 

1.相続人 ○○○男 は次の遺産を取得する。

<土地>
所   在  中央区×町×丁目
地   番  ×番×
地   目  宅地
地   積  180.00㎡

<建物>
所   在  中央区×町×丁目 ×番地
家屋番号   ×番×
種   類  居宅
構   造  木造かわらぶき2階建
床 面 積  1階  55.20㎡
2階  53.50㎡

 

2.相続人 ○○×子は次の遺産を取得する。

<現金>  金2,000,000円

<預貯金> ××銀行××支店 普通預金 口座番号00000000
  ××銀行××支店 定期預金 口座番号00000000
××信用金庫 ××支店 普通預金 口座番号00000000

 

3.相続人 ○○○男は、第1項記載の遺産を取得する代償として、××太郎に、令和×年×月×日 までに、金6,000,000円を支払う。

 

4.本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産については、相続人××太郎がこれを取得する。

 

以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、本協議書を何通作成し、署名押印のうえ、各自1通ずつ所持する。

令和×年×月×日

 

<相続人○○○男の署名押印>
住所
氏名             ㊞
<相続人 ○○×子 の署名押印>
住所 
氏名             ㊞
<相続人 ×太郎 の署名押印>
住所
氏名             ㊞


 

遺産分割協議書の記載項目と記載例

遺産分割協議書には、預貯金や不動産などのいわゆるプラスの財産だけでなく、負債などのマイナスの財産も含めた全ての財産についての分割方法を記載します。後から財産が見つかった場合の対処に関する記載も忘れないようにしましょう。
ここでは、各財産についての書き方や記載例をご紹介します。

 

1.不動産

不動産については、登記簿謄本に記載されている通りに記載します。
登記簿謄本は法務局で取得できる書類です。相続登記を行う場合も、不動産を売却する場合も必要となりますので、手元にない場合は取得しておくとよいでしょう。

 

① 土地

登記簿謄本を確認し、下記の項目を記載します。

  • 所在
  • 地番
  • 地目
  • 地籍
  • 持分(共有名義とする場合)

それぞれの項目が何を意味するのかわからなくても、登記簿謄本の表題部を見れば上記の項目がありますので、そのまま書き写しましょう。
なお、所在や地番は実際の住所地とは異なります。登記簿謄本に記載されている通りに記載しましょう。

また、該当不動産を複数の相続人で相続する場合は、それぞれの取得割合を「持分」として以下のように記載します。

【土地の記載例】
所   在  ××区×町×丁目
地   番  ×番
地   目  宅地
地   積  ○○.○○㎡
(持分 ○分の1)

 

② 建物

建物の場合も、登記簿謄本に記載されている内容の通りに、以下の項目を記載します。

  • 所在
  • 家屋番号
  • 種類
  • 構造
  • 床面積

【建物の記載例】
所   在  ××区×町×丁目 ××番地
家屋番号   ×番×
種   類  居宅
構   造  木造かわらぶき2階建
床 面 積  1階  ○○. ○○㎡
2階  ○○. ○○㎡

 

③ マンションなど区分建物

マンションなどの区分建物の場合は、戸建ての場合とは少々書き方が異なります。

まず、土地の登記簿謄本を見ながら、下記の項目を記載しましょう。
このうち持分についてのみ、建物の登記簿謄本を確認する必要があります。建物の登記簿謄本に記載の「表題部(敷地権の表示)」のうち「③敷地権の割合」部分に記載の割合を書きましょう。

  • 所在
  • 地番
  • 地目
  • 地積
  • 持分

次に、建物について記載します。初めに建物全体を特定した上で、さらに専有部分を特定しなければなりません。それぞれ以下の項目を記載します。
いずれも建物の登記簿謄本に該当する項目がありますので、そのまま書き写しましょう。

◎建物全体

  • 所在
  • 構造
  • 床面積

◎専有部分

  • 家屋番号
  • 建物の名称
  • 種類
  • 構造
  • 床面積

【区分建物の記載例】
(土地の表示)
所   在  ××区×町×丁目
地   番  ×番×
地   目  宅地
地   積  ○○.○○㎡
持   分  ○○○○○○分の○○○○

(一棟の建物の表示)
所   在  ××区×町×丁目 ××番地×
構   造  鉄筋コンクリート造陸屋根○階建
床 面 積  1階 ○○○.○○㎡
       2階 ○○○.○○㎡
       3階 ○○○.○○㎡
       ・
       ・
       ・
       ○階 ○○○.○○㎡

(占有部分の建物の表示)
家屋番号  ×町×丁目 ××番×の302
建物の名称  ○○マンション
種類  居宅
構造  鉄筋コンクリート造陸屋根○階建
床面積  3階部分 ○○.○○㎡

 

2.預貯金

預貯金については、必ず下記の項目を記載します。

  • 金融機関名
  • 支店名
  • 口座種別
  • 口座番号
  • 金額に関しては、利息がついたり、予想外の入出金があったりして変動する可能性があるため、記載しない方がよいでしょう。実際、金融機関で相続や解約の手続きをする際に、遺産分割協議書に記載された金額と異なっていると、手続きができないこともあります。
    金額に相当するものを記載したい場合は、以下のように「のすべて」という文言を付記しておくとよいでしょう。

    【預貯金の記載例】
    ××銀行×支店 普通預金 口座番号00000000 (のすべて)

     

    3.有価証券

    有価証券は、口座のある証券会社を特定した上で、下記の項目を記載します。

    • 株式の銘柄
    • 株数

    証券会社と取引がある場合は、配当金の支払通知書や取引残高の報告書が定期的に送られてきます。財産調査の際に探してみるとよいでしょう。

    また、万一、把握できていない財産が存在した場合のために、以下のように「預託している被相続人名義の財産すべて」という文言を添えておくと安心です。

    【有価証券の記載例】
    ××証券××支店(口座番号××××××)の株式

    • 〇〇株式会社 株式△△△株
    • ●●株式会社 株式××株
    • その他、預託している被相続人名義の財産すべて

     

    4.自動車

    自動車は自動車検査証を確認しながら、下記の項目を記載します。

    • 車名
    • 自動車登録番号又は車両番号
    • 型式
    • 車体番号

    【自動車の記載例】
    車名  ××××
    登録番号  大阪 ●●● あ △△△△
    型式  AAA-BC34W
    車体番号  ×××××-×××××

     

    5.債務

    単純相続をする場合、プラスの財産だけでなく債務などマイナスの財産も含めた全ての財産を相続することになります。マイナスの財産が存在する場合、遺産分割協議書には、どの債務について誰がどれだけ支払うのかという点を明記しておかなければなりません。

    【債務の記載例】

    • 相続人Aは××銀行○○支店の借入金●●円を負担する
    • 相続人B及びCは××銀行○○支店かの借入金●●円を各2分の1ずつ負担する

     

    6.後日財産が発覚した場合について

    財産調査では見つからなかった財産が、後になって見つかることもあります。その場合の対処についてあらかじめ協議した上で決定し、遺産分割協議書に記載しておけば、いざ見つかったときにスムーズに対処することが可能です。後から財産が見つかった場合の対処の仕方については、主に以下の三つの方法が考えられます。

    1. ①改めて相続人全員で遺産分割協議を行う
    2. ②特定の相続人が相続する
    3. ③相続人全員で法定相続分通りに分割する

    それぞれの場合の記載例は以下のとおりです。

     

    【①再度遺産分割協議をおこなう場合の記載例】

    本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産については、改めて相続人間で遺産分割協議を行う

     

    【② 特定の相続人が相続する場合の記載例】

    本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産については、相続人××××がこれを取得する

     

    【③ 法定相続分どおりに分割する場合の記載例】

    本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産については、各相続人の法定相続分の割合にて取得する

     

    後から見つかる財産がプラスの財産であるとは限りません。後から財産が見つかった場合の対処の仕方を決める際は、債務などマイナスの財産が発覚する可能性もあるという点には注意しておきましょう。

     

    7.代償分割をした場合の記載方法

    代償分割とは、特定の相続人がある遺産を相続する代わりに、他の相続人に対してその代償となる金額を支払う遺産分割方法のことです。例えば、ある相続人が、被相続人が所有し、居住していた自宅を相続する代わりに、他の相続人には相当する金額を支払う場合が該当します。

    代償分割がある場合、遺産分割協議書には以下の事柄を明記しておきましょう。

    • 誰が
    • どの遺産を取得する代償として
    • 誰に
    • いつまでに
    • いくら支払うのか

    【代償分割の場合の記載例】
    相続人Aは、第●項記載の遺産を取得する代償として、Bに対して令和×年×月×日 までに、金○○○○○円を支払う。

     

    8.相続人全員の署名・押印

    遺産分割協議書の末尾には、相続人全員の署名と押印が必要です。以下の記載例のように、氏名だけではなく住所も記載しておきましょう。
    また、後からトラブルになるのを避けるためにも、各相続人の住所と氏名はそれぞれ本人が手書きで記入しておくとよいでしょう。

    【相続人の署名欄の記載例】
    <相続人○○○○の署名押印>
    住所 氏名             ㊞

     

    遺産分割協議書を作成する際のポイント

    遺産分割協議書の作成にあたっては、過不足のない内容にするために、以下のポイントを念頭に置いておくとよいでしょう。

     

    1.遺産分割協議書を作成する目的

    遺産分割協議書には、遺産分割協議において相続人間で合意した内容を明記します。その目的としては、主に以下の3つが挙げられるでしょう。

    • 合意内容を明確にすることで、後になってトラブルが起きないようにする
    • 預貯金や不動産など被相続人の財産の相続手続きに利用する
    • 相続税の申告の際に添付する

    これらの目的を達成するためにも、遺産分割協議書には抜け漏れなく正確に財産の記載をすることが大切です。

     

    2.決まった形式はない

    遺産分割協議書の形式は特に決められていません。今回ご紹介したサンプルのように横書きでもかまいませんし、縦書きにしても問題ありません。
    また、パソコンで作成したものでも手書きをしたものでも有効です。

     

    3.資産や債務は全て記載

    被相続人の資産や債務は全て記載します。財産は、特定できるように書くことが大切です。「遺産分割協議書の記載項目と記載例」で説明した、各財産についての記載項目は全て明記しておくようにしましょう。
    また、不動産は登記簿謄本に記載されている通り、正確に書くことが大切です。少しでも違っていると、法務局での手続きができない場合もあるため注意が必要です。

     

    まとめ

    今回は、遺産分割協議書のサンプルをご紹介し、遺産分割協議書の記載項目や文例、遺産分割協議書を作成する際のポイントなどについて解説しました。

    遺産分割協議書には、特に決まった形式はありません。今回ご紹介したサンプルを参考に大枠を作成し、個々の事例に合わせた内容を反映すれば、完成させることができます。
    ただし、記載が必要な項目について抜け漏れなく正確に記載しないと、相続手続きで使えないこともありますし、後になってトラブルの原因になる可能性もあります。そのため、最低限必要な事項は確実に記載しておくことが非常に大切です。

    多くの方にとって相続手続きは不慣れなものであり、難しいと感じることの多いものでしょう。どうすればよいのかわからなかったり、相続人同士での話がまとまらなかったりするために、いつまで経っても進まないことも少なくありません。
    遺産分割協議が進まない場合や、自分達だけで遺産分割協議書を作成するのが難しいと感じた場合は、速やかに専門家に相談することをおすすめします。

     

     

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